前回は、月蝕図の影響が、その後の6回の満月を通してだんだんと現実化していく様子を今年の5月5日の月蝕を例に考えました。今回は、過去の例を参考にして、このような視点の解釈が、実際にはどんな感じで働いているのかを検証してみましょう。
その前に、これまでのマンデンシリーズで考慮してきたことを大まかに振り返ります。まず、遠い天体同士のアスペクトがさまざまな社会構造の変化や進化を促し、それらに対する速い天体のアスペクトが変化のテーマを日常的、具体的な次元へもたらすことを考えました。次に、重要なアスペクトのホロスコープ(グレートコンジャンクションなど)が、そのアスペクトが特定の地域や時期的な背景に合わせ具現化する様子を、より具体的に語るということを考えました。このとき、長期的なアスペクト(例えば、グレートコンジャンクション)のテーマをより短期的(例えば、日蝕月蝕)なアスペクトのホロスコープが少しずつより日常的な次元での現状の流れの中に反映させていくというかたちでイメージ作りを進めてきていました。つまり、より遠い天体のアスペクトという変化の骨組みに対して、グレートコンジャンクションや日蝕月蝕、新月などのホロスコープは肉付けをしていくようなイメージでしょう。そのような流れで、今回は日蝕月蝕の影響が新月満月により分割されて現実化してくる様子を考えていこうと思います。
今回注目するのは、2001年1月10日に起こった月蝕です。このときは、まだ、小泉政権は生まれておらず、故小渕首相の後を継いだ森首相に対する批判が強くなってきている時期でした。そして、この月蝕から半年の期間の間に流星のように現れた小泉氏が田中真紀子さんの強い応援で自民党の総裁になり、首相の座につき、構造改革を声高に避けぶことになりました(なお、以前の記事の中で土星と冥王星のアスペクトとして近い時期を検証しているので参考にしてください)。
この流れは、この時期のトランジットの天体同士のアスペクトの流れにもよく現れています。まず、前年の2000年には、木星と土星の間でグレートコンジャンクションがあり、社会の仕組みの中に新たなテーマを持ち込もうという動機が強まっています。そして、2000年のうちに木星と冥王星がオポジションを形成し、その後、土星と冥王星のオポジションが形成されていくという流れができています。政治構造の変化が起きていた背景にはこのようなポイントも重要な影響を及ぼしていたのでしょう(冥王星の影響は、社会の動き=木星土星の中に、より多くの大衆の本音を反映させようとします)。
では、まず、2001年1月の月蝕図(2001.01.10.05:24JST)から、その後の半年の間に起こっていく可能性のあるテーマをまとめてみましょう。単純化するために、例によってアスペクト(オーブは5度)を中心に考えます。
この図の中には、ノーアスペクトになっている天体はないので、解決すべき問題として認識される焦点になるのは、木星と金星のスクエア、海王星と火星のスクエア、天王星と土星のスクエアです。どれも設定した5度のオーブぎりぎりであり、わずかに外れているものもあります。ちなみに、木星と金星のスクエアはアセンダントとMCの支配星との間でかかわっているので、政権(MC)を変更しようとする国民(AS)の積極的なアプローチがありそうです。
では、ひとつひとつのアスペクトに関連しやすいテーマを挙げてみましょう。
木星と金星:考え方や哲学の評価。ビジョンや理想像を理解しやすく説明、魅力を持たせる。女性の間での流行の変化。どんなビジョンや考え方が物質的豊かさにつながるかを評価。
火星と海王星:夢や理想を行動化。雰囲気や大衆の空気を意識した行動や主張。うわさや誘惑に反応しやすい。
天王星と土星:秩序や管理構造を大衆の意見の実情に合わせて変化させる。改革をしっかり行おうとする葛藤。秩序がうまく働いていない部分の露呈が改革意識を強める。
これらのテーマが6カ月の間に具体化しやすくなっているわけです。この6カ月間に起こったことがらを整理して考えてみましょう。この時期には、再編された新省庁がスタートし、えひめ丸事故の対応時の問題から森首相が退陣することになり、その後の総裁選で小泉首相が選ばれ、小泉内閣が誕生しました。これらの6カ月に起こったことがらを先ほどのアスペクトに対応させながら考えてみましょう。解釈については、事後だからこそ具体的に限定できる部分もあります。
木星と金星:考え方や哲学の評価。ビジョンや理想像を理解しやすく説明、魅力を持たせる。女性の間での流行の変化。どんなビジョンや考え方が物質的豊かさにつながるかを評価。
総裁選での小泉人気は田中真紀子さんの強力な応援や女性の評価が強力な流れを作ったと考えられます。遠い天体のアスペクトとして木星と冥王星、土星と冥王星のオポジションが次々とやってくる時期で政治や社会構造の変化のタイミングが来ていましたが、その流れが女性の支持によりサポートされていった成り行きに関してはこの時期の月蝕の木星金星による「色付け」が濃く現れたのでしょう。ちなみに、月蝕の太陽は小泉首相の太陽のそばにあり、他にも水星の位置など関連する配置が多く見られます。また、金星と木星は生活やさまざまな活動の実感(金星)を社会的なビジョン(木星)に反映させていくという動きが現れやすくなります。経済政策を振り返ったり、協力関係や取り決めを行うための見通しを作る動きにも関連します。スクエアになっているので、それらの問題の進み方に現状からの大きな変化や対立の認識などを体験する可能性があります。京都議定書からのアメリカの離脱はそんな側面にも関わるかもしれません。
火星と海王星:夢や理想を行動化。雰囲気や大衆の空気を意識した行動や主張。うわさや誘惑に反応しやすい。
これらの解釈は、さらに、うっかりした的外れな行動が批判を招く。不正の摘発や逮捕、不信の指摘、自己犠牲的な行動、海や原油に関する事故などと発展させることができるでしょう。さて、森前首相が退陣するきっかけになったのは、えひめ丸の事故とその対応の不手際です。これは、水の事故という視点とうっかりさがつっこまれるという両方の視点で火星と海王星に関連すると考えられます。また、この時期外務省の不祥事が相次いで発覚していきましたが、不祥事(海王星)に対する追及(火星)と考えればそれらもこのアスペクトに関連しそうです。
天王星と土星:秩序や管理構造を大衆の意見の実情に合わせて変化させる。改革をしっかり行おうとする葛藤。秩序がうまく働いていない部分の露呈が改革意識を強める。
秩序改革の突破口を見つける意味では、支持率の落ちていた森前首相の適切でない資質が露呈したことにも関連するのではないでしょうか。また、外務省など改革へつながる不祥事の露呈にも関わっていそうです。また、再編された新省庁のスタートも新しい構造(天王星)がこれまで行っていた機能(土星)をうまく引き継いでいかなければならないという点でこのアスペクトに関連が深いかもしれません。
では、前回の分析のように期間別に分け、それぞれのテーマの変遷の過程を考えてみましょう。関連する図とその特徴を一緒に挙げました。
1.もとの蝕図。全体のテーマの提示。
>2001.01.10.05:24.JST:木星□金星、海王星□火星、天王星□土星。太陽には天王星が30度他。
この時期には、再編新省庁のスタート、筋弛緩剤事件、KSDでの議員逮捕などが起こっています。また、JR新大久保駅で転落した人を助けようとして列車にひかれる事件もありました。火星と海王星の組み合わせが強く感じられそうです。
2.具体的な対象や効果、問題点を意識。
>2001.02.08.16:11.JST:太陽天王星土星月火星によるグランドクロス。海王星はディセンダント上で木星金星と小三角。
えひめ丸の事故が起こり、森首相の資質が問われることになりました。森首相の退陣の過程を考えるとこれが2番目の「問題点を意識」に関係するように思われます。また、この時期には田中長野県知事による「脱ダム宣言」やシーガイアの経営破綻などもありました。
3.対策の検討、具体的な状況の理解と戦略の試み。
>2001.03.10.02:23.JST:太陽月に対して冥王星がスクエア。土星天王星のスクエアには水星が関与。
この時期には不信任決議案が否決された後、森首相は退陣を表明。4月に総裁選を行うことになりました。日経平均株価は16年ぶりに1万2000円を割り、日銀は事実上のゼロ金利を復活させました。太陽に冥王星が関わっているので水面下や深い動機に関する大きな変化という「色付け」で現れやすいところがあったのでしょう。
4.対策の効果を体験、反省。
>2001.04.08.12:21.JST:土星□天王星。太陽には火星がトライン。海王星がディセンダントにあり、木星水星金星と小三角。
自民党総裁選があり、小泉首相が圧勝。この総裁選は「対策の効果を体験」したことになっているのだろうか。太陽には火星がトラインになっており、新たな積極的な動機をスムーズに行動化しやすい配置になっており、また、木星金星は海王星と共にディセンダントーアセンダントへ強く影響を与えていました。
5.体験をもとにテーマの意義を創出。全体へ循環させようとする。
>2001.05.07.22:52.JST:木星冥王星のオポジション。太陽と月へは30度系でアスペクト。水星◎土星
この時期は、小泉内閣が発足し、具体的な方針や動きを打ち出していく時期に重なりました。所信表明やさまざまな改革の方針を明確にしていきました。また、雅子さまのご懐妊の正式な発表もありました。マイラインが始まり(これをきっかけに、土星の双子座入りに合わせITバブル崩壊へつながる流れが進んだ)、核燃料再利用のプルサーマルは市民の反対にあいました。水星と土星は公式発表のようなイメージがあります。
6.個人個人の実感。次の活動テーマの準備。
>2001.06.06.10:39.JST:火星●水星木星、月◎冥王星
池田児童殺傷事件(火星と水星のオポジションに関連?また、月蝕の火星海王星にも関連か?)が起こり、子どもの安全ということににわかに関心が向きました。また、相次いで大学の入試ミスが判明。都議選では小泉効果で自民が優勢になりました。
こうして見てみると、細かいできごとに関しては、そのときそのときの配置の特徴がそのまま現れる部分もありますが、流れのあるものに関しては多少1〜6ステップの意味に合わせて展開している部分もあるように感じられました。このように、それぞれのホロスコープは、大きな流れのあるできごとや単発のことがらを全体的な模様の中で考えられるような視点を提供します。もちろん、他のマンデンでの視点と同様、この視点だけですべてがクリアーに見渡せるわけではありませんが、この方法でも影響力の具現化の一端をイメージしていくことができそうです。
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